現役マジシャンが驚愕!映画『ブラック・ショーマン』福山雅治の"本物すぎる"マジック演技

結論から言います:福山さんのマジック、凄いっす。
映画館を出た瞬間、私はニヤニヤが止まりませんでした。
福山雅治さんが演じるマジシャン・神尾武史の姿は、もはや「俳優がマジシャンを演じている」というレベルを遥かに超えていたからです。
実に面白い。(言ってみたかっただけ...)
田中 亮監督が、インタビューにて「簡単に映像加工できてしまう今、CGや映像トリックでは観客は喜んでもらえない」といった旨の発言をされていましたが、それに応える福山さんのプロフェッショナルが、映像の大胆さと誠実さを強く生み出していたように感じます。
今回は、そんな「ブラック・ショーマン」を、マジシャンから見た感想を書いて行こうと思います。
作品の魅力:マジックの思考法で事件を解決
物語は、活気を失った町で起きた殺人事件が発端。
元ラスベガス級の超一流マジシャン・神尾武史(福山雅治)と姪の真世(有村架純)がバディを組み、観察眼・心理誘導・タイムミスディレクションといった"マジックの思考法"を駆使して真相に迫ります。
この設定だけでも、マジシャンとしてはワクワクが止まりません。
キャラクター造形の面白さ
今回の映画に出ていた神尾というキャラクターは、今日本にいる様々なマジシャンが混ざっているように見えます。
プロジェクションマッピングを応用したマジックはイリュージョニストHARAさんに強い影響を受けていそうですし、アングラな方法を使ってお客様の心を直接揺るがす演技は、名前は伏せますが長崎のあのバーの店主っぽいな~と感じました。
演じられたマジックも、古今東西の様々なマジシャンからの影響が見え隠れします。
クライマックスのシーンでは、スライディーニの影響を強く感じましたし、日本の伝説・石田天海の技法も組み込まれていましたね。
PVにも写っているライターのシーンはPrometheusっぽい...?
マジシャンが見ると、劇場版アニメで原作再現を見つけた時のような楽しみ方ができると思います。
私はずっと興奮しっぱなしでした(笑)
マジシャンから見た技術面:ここが凄い!
1. バランスが最高な視線誘導
福山さんの目線から体軸、そして手への重心移動が驚くほど自然。
マジックは楽しめる角度が決まっている物が多く、映画にするなら徹底した「魔法が宿る角度」を研究する必要があります。
だからこそ、映像でマジックを収録するとどうしても「手元オンリー」みたいな退屈なアングルになりがちです。
しかし、今回の映像はワンカットで綺麗に始まりから終わりまで見られる演技が沢山収録されていました。
これは長回し実演だからこそ伝わる臨場感で、まさに「生きたマジック」を観ている感覚でした。
カメラマンさんの技量はもちろん、KiLaさんなどマジシャンの演技指導への気合を感じます。
2. 圧巻の「コインロール」両手技
マジシャンなら誰もが練習する基礎技術「コインロール」。
しかし、劇中で福山さんが披露したのは両手でのコインロール。
内心ちょっとドキッとしました。
片手でも習得に時間がかかるこの技術を、短い撮影期間で習得し、美しく両手で決めてみせる。
片手だけできて満足出来ていた時期が長かった自分みたいなマジシャン、ヒヤッとしたんじゃないでしょうか(笑)。
3. ピックポケット(スリ)の自然な距離感
今回の劇中では、マジシャンがスリの演目でよく使う技術がふんだんに含まれていました。
ピックポケットと呼ばれるこれらの技術は、海外から入ってきたこともあり、どこか日本人との相性が悪いことが多いです。
しかし、海外の大げさな演出ではなく、ちゃんと日本人の距離感の中で自然に成立するスリの技術に仕上がっている。
接触・距離・セリフのテンポが完璧に噛み合っていて、「これは本当に成立しそう」と興奮していました。
「It's Showtime」が様式美になる理由
福山さんがこのセリフを発した瞬間、劇場の空気感が変わります。
それは単なるカッコよさによるものではなく、彼が完全にマジシャンというキャラクターになりきっているからこそ生まれる説得力です。
マジックもまた「演技」の芸事。
俳優である福山さんだからこそ到達できた、マジシャンの立ち姿、間合い、声のテンポまで含めた完璧な役作りがそこにありました。
冷静に考えると50歳を超えた男性が「It's Showtime」なんて言うのは相当なリスクなのですが、それを感じさせない福山さんの魅力がありました。
本物志向を支える監修体制
マジック指導でKiLaさんが監修されていることは、放送前から告知されていましたが、エンドロールを見ていてこの完成度の背景には、確かな監修体制があるんだなと理解しました:
-
マジック演出・技術指導監修:KiLa
-
マジック協力:横山俊之介
-
テーブルクロス引き指導:ダンディGO
細部の所作まで専門家が伴走し、福山さんは数か月の特訓を経て、劇中のマジックをすべてスタントなしで挑んだと報じられています。
物語の整理をする演出でフラリッシュをしていたのですが、あれも福山さんなんですかね?
あれは横山さん? 兎にも角にも、本物志向を支えるプロの仕事ここにありという映画でした。
マジシャンとして学んだこと
この映画を観て、私は「演技をするとはどういうことか」を改めて学べたと思います。
マジシャンは技術を習得するだけでは不十分で、その背景にあるキャラクター、物語、感情まで含めて表現しなければならない。福山さんの演技は、そのことを鮮明に教えてくれました。
同じ技をやっても、私がやれば単なる手品、彼がやれば芸術になる。
その差は何か?
それは、技術の向こう側にある「人間」を表現できているかどうか。
我々が「アクト」と呼んでいるそれを、本当に「演じる」ことができているのかを問われた気持ちになりました。
総評:福山さんのマジック、凄いっす。
ここまで長々と色々喋ってきましたが、結論これです。
直近で流行った「国宝」も日本の伝統芸能について向き合う映画でしたが、この「ブラック・ショーマン」もマジックという芸事に正面から向き合った作品だと思います。
マジシャンはもちろん、映画好きの方にも、ぜひ劇場でその「本物の魔法」を体験していただきたい。
きっと、私と同じようにニヤニヤが止まらないはずです。
作品情報
-
原作: 東野圭吾『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』
-
監督: 田中亮
-
出演: 福山雅治、有村架純 ほか
-
配給: 東宝
-
公開: 2025年9月12日