【レビュー】オーバーロード「聖王国編」を見てきたぞ!
ファン必見の劇場版、その魅力と課題を劇場から特典小説まで徹底レビュー
超良かったです。
※この記事には劇場版『オーバーロード 聖王国編』のネタバレが含まれます。
ネタバレになる箇所は黒塗りにしていますので、クリックして表示してください。
また、下のスイッチを押すと一括でネタバレを表示できます。
「オーバーロード 聖王国編」は、大人気ライトノベル『オーバーロード』を原作とした劇場版アニメです。
DMMORPG「ユグドラシル」をプレイしていた鈴木悟は、ゲームのサービス終了と共にその世界に閉じ込められます。しかし、そこは単なるゲームの世界ではなく、ゲームの設定を引き継いだファンタジー世界でした。
廃ゲーマーであった鈴木悟は、その世界で無敵の存在。かつて共にゲームをプレイしていた仲間も同じ世界に転生しているかもしれないため、かつてのギルド名「アインズ・ウール・ゴウン」を名乗り、圧倒的な力を駆使して各国や勢力を支配していくという独自の物語が、多くのファンを魅了してきました。
TVアニメは2024年10月時点で第4期まで放送されており、今回の劇場版では、その第4期で大幅にカットされた部分が映像化されます。
原作小説である『オーバーロード』12巻は2017年に刊行されており、実に7年の時を経ての劇場映画化となります。
私自身も、今回の劇場版をずっと楽しみにしていました。
今回は、そんな劇場版『オーバーロード 聖王国編』の評価や感想を、作品の魅力や課題を含めて徹底的にレビューしていきます。
1.劇場クオリティ:最高の映像美
まず注目すべきポイントは、映画としてのクオリティです。TV放送のアニメと劇場で見るアニメでは、求めるクオリティが異なります。
作画は崩壊していないか、手抜きのCGコピペが行われていないか。第3期の大虐殺を見ていた身からすると、とても不安でした。
しかし、その不安は冒頭の5分ですべて吹き飛びます。
今回の映画では、たくさんの亜人軍や聖王国のモブ兵士が登場しますが、そこに手抜きは一切感じられません。同じ轍は踏まないと言わんばかりに気合の入った作画が、亜人軍の侵攻にとてつもない迫力を生み出しています。
そして、聖王国編ではこれまでのアニメではなかなか見られなかった、魔法詠唱者同士の戦いが見られます。その魔法陣を使った演出がとても粋で、魔法陣のサイズでその術者の力量がわかるように作られています。 その圧倒的なクオリティにひたすら圧倒されました。
2. 駆け足すぎたストーリー展開
これは上下巻合わせて980ページを超える大ボリュームな原作を、135分の映画に圧縮しているので仕方ない部分もありますが、原作ファンからすると「あのシーンも見たかった」という場面がちらほらありました。
個人的に見たかったけど無かったシーンは以下のとおりです。
聖王国編ではアインズ以外のキャラクター、特にネイア・バラハやレメディオス・カストディオといったキャラクターの成長や内面の変化が物語の重要な要素になりますが、細かなシーンの大胆なカットにより、物語の大枠はしっかりとおさえているものの、なぜこうなったかの因果関係がわかりにくくなってしまっています。
原作未読の方でも十分に楽しめる構成になっていますが、既読勢の人には少し物足りなさを感じる展開になっているかもしれません。
3.キャラクター描写の緻密さ
「聖王国編」は、ネイア・バラハとレメディオス・カストディオ、この2人の対比が物語の主題であり魅力です。
作中でファンから最も死なないで欲しいと懇願されたネイアに対して、どう殺されるのか考察されるレメディオスというだいぶ可愛そうな対比にもなっています。
ここまで極端に評価が変わるのには、ネイアとレメディオスの緻密な人間模様の描写にあります。
ネイア・バラハは、正義感が強い従者で、初めは聖王国を守るために戦いますが、物語が進むにつれて、彼女の中での正義感が徐々に変わっていきます。
圧倒的な力を持ち、それを慈愛を持って振るうアインズと、力がなく、虐殺を許すも無力を周りに当たり散らすレメディオス。
この2人に挟まれ、様々な経験を通して信念が揺らぎ、最終的に自身の正義感を見つけ出し、自分の意志で大きな決断をする過程が原作小説では丁寧に描かれており、読者はどんどん心を掴まれていきます。
一方レメディオスは強いリーダーシップを持ちながらも、時には独善的な行動を取るキャラクターです。彼女の強い信念と、ネイアの葛藤が対比的に描かれ、この聖王国編に深みを与えています。
レメディオスの理想主義的な正義と、ネイアの現実的な視点が交差することで、単純な善悪の物語で終わらずオーバーロードという作品の魅力を生み出しているのです。
今回の映画は、この2人のキャラクター性と、その対比を表現するという点において最高の作品だったと思います。
様々な経験を通して変わっていくネイアの価値観。
一貫して聖王女の意思を貫き通すレメディオスの力強さ。
そして、それらどちらにもいい意味でも悪い意味でも強い影響を与えるアインズ。
これら三竦みの関係性がしっかりと表現されていて、終始興奮しっぱなしでした。
4.主題歌「WHEELER-DEALER」の魅力
主題歌「WHEELER-DEALER」には心を奪われました。
その力強いサウンドが作品の世界観と見事にマッチしており、鑑賞後も頭から離れない魅力を放ちます。
むしろ鑑賞後の興奮と多幸感を生み出していると言っても過言ではありません。
「WHEELER-DEALER」は、OxTによるダイナミックなデジタルロックサウンドが特徴で、劇場版『オーバーロード 聖王国編』のダークで壮大な世界観を完璧に表現しており、聴く者の心を強く揺さぶります。
主題歌ではありますが、この曲が登場するのは
とにかくかっこいいので、まずは一度聞いてみてください。
作詞を手掛けたhotaruは、アニメソングやゲーム音楽を中心に活動する作詞家で、OxTの楽曲に多数の歌詞を提供しており、その深いテーマ性や物語性のある歌詞が特徴です。
代表作には「Clattanoia」(アニメ『オーバーロード』主題歌)や「Silent Solitude」などがあり、彼の紡ぐ言葉は楽曲に深みと説得力を与えています。
作曲・編曲を担当したTom-H@ckはOxTのメンバーであり、アニメやバンド楽曲の作曲家として広く知られています。
エネルギッシュで力強い作曲スタイルが特徴で、アニメ『けいおん!』の「Don't say 'lazy'」やOxTの「Clattanoia」など多くのヒット曲を手掛けており、彼の音楽は一度聴いたら忘れられないインパクトがあります。
また、OxTのもう一人のメンバーであるシンガーのオーイシマサヨシにも触れなければなりません。
彼はその力強く透明感のあるボーカルで楽曲に深みを与えています。オーイシマサヨシはソロアーティストとしても活躍しており、「後の祭り」(TVドラマ「サバエとヤッたら終わる」主題歌)や「君じゃなきゃダメみたい」(アニメ『月刊少女野崎くん』オープニングテーマ)など、多くの主題歌を担当しています。
普段あんなに明るくてポップな歌を歌っているオーイシさんから出てくるダークファンタジー風味、厨二感マシマシのボーカルが映画のワクワクボルテージを最高水域まで引き上げてくれました。
このゴールデンメンバーがまたこうしてオーバーロードの為にタッグを組んでくれるのは、とても嬉しいことですね。
特典小説はIMAX版でもらえないので、音響設備の整った環境で映画を見れなかったのがとても悔やまれます。
5.我らがアインズ様
オーバーロードで絶対に切っても切り離せないのがアインズ様。
我らがオーバーロードの主人公です。
今回の映画は、終始続く魔導国のマッチポンプと、その被害を受ける聖王国が描かれていますが、アインズ様も立派な被害者です。
ナザリック屈指の知恵者であるデミウルゴスから投げられる無茶ぶりに、必死に応えていきます。
強烈な理不尽に苛まれながら
圧倒的強者、圧倒的知恵者、玉座に座った死とまで言われるアインズ様が、その異常な過大評価を受けながらも本人は一般人かそれ以下という状況で、一挙手一投足すべて偶然でなんとかしてしまう喜劇が完璧に描かれていて、ここも劇場版オーバーロード聖王国編の魅力になっています。